
相続放棄すると家はどうなる?期限・手続きと放棄後の管理責任
相続放棄すると家はどうなる?
3か月の期限と、放棄した後に残る管理責任
執筆:東徳不動産商事 編集部
この記事はe-Gov法令検索・裁判所「相続の放棄の申述」などの公表資料にもとづいています(2026年10月確認)。
親が亡くなり、住む予定のない実家だけが残ったとき、「相続放棄すれば家のことはもう関係なくなるのでは」と考える方は少なくありません。しかし、放棄には期限と手続きがあり、放棄した後も家の管理に責任が残る場合があります。この記事では、周南市で不動産の売買や管理を手がける私たち有限会社東徳不動産商事(以下、東徳不動産商事)が、相続放棄をしたとき家がどうなるのか、法律の仕組みと管理責任の考え方を整理しました。放棄するかどうかの個別の判断は、弁護士・司法書士・家庭裁判所にご確認ください。
![]() | この記事で分かること ✓ 相続放棄の期限(3か月)と家庭裁判所での手続き ✓ 放棄すると家が次の順位の相続人へ移る流れと、全員が放棄した場合 ✓ 2023年4月の改正で決まった、放棄した後の管理責任 ✓ 放棄する前にしてはいけないこと ✓ 放棄以外の選択肢(相続して売る、空き家バンク、相続土地国庫帰属制度) |
結論:放棄するなら3か月以内に家庭裁判所へ。家財には手を付けない
相続放棄をすると、その人は初めから相続人ではなかったことになり、実家の土地や建物も引き継ぎません。ただし、放棄は家庭裁判所に申述(書面で申し出ること)して初めて認められるもので、期限は原則として、自分が相続人になったことを知った時から3か月です。親族の間で「私は要らない」と伝えただけでは、法律上の放棄にはなりません。
また、放棄しても家がなくなるわけではありません。家は次の順位の相続人へ移り、全員が放棄すれば、最終的には家庭裁判所が選ぶ相続財産清算人が整理します。放棄の時点で実家を実際に管理していた人には、引き渡すまで家を保存する義務が残る点にも注意が必要です。
相続放棄の期限と手続き
民法915条では、相続人は「自己のために相続の開始があったことを知った時」から3か月以内に、相続するか放棄するかを決めることとされています。この期間を熟慮期間といいます。放棄は、亡くなった方の最後の住所地を受け持つ家庭裁判所に申述書を出して行い(民法938条。最後の住所地が周南市・下松市・光市なら、山口家庭裁判所周南支部)、費用は申述人1人につき収入印紙800円と、裁判所ごとに決められた郵便切手です。

図1 相続放棄の手続きの流れ(何もしないまま3か月が過ぎると単純承認とみなされます)
戸籍を集めるのに時間がかかる、借金がどれだけあるか分からないといった事情で3か月では判断できない場合は、期間内に家庭裁判所へ申し立てれば、熟慮期間を延ばしてもらえることがあります。何もしないまま3か月が過ぎると、すべてを引き継ぐ単純承認をしたものとみなされます。
![]() トウト君 | トウト君のひとこと|よくある勘違い 家族に「私は要らない」と伝えただけでは、放棄したことにはならないんです。家庭裁判所に申述して、初めて法律上の放棄になります。 |
申述に必要な主な書類
① 相続放棄の申述書
② 亡くなった方の住民票の除票または戸籍の附票
③ 放棄する人の戸籍謄本
④ 亡くなった方の死亡の記載がある戸籍謄本(相続の順位によっては、出生からのすべての戸籍が必要)

イメージ:実家の鍵と書類(実際の物件・書類ではありません)
放棄すると、家は次の順位の相続人へ移る
放棄した人は、初めから相続人にならなかったものとみなされます(民法939条)。そのため、子ども全員が放棄すると亡くなった方の父母や祖父母へ、その方々もいなければ兄弟姉妹へと、相続する権利が順に移ります。兄弟姉妹が先に亡くなっていれば、おいやめいが相続人になることもあります。次の順位の人の3か月は、その人が自分が相続人になったことを知った時から数えます。

図2 相続する権利の移り方(次の順位の人の3か月は、その人が相続人になったと知った時から数えます)
自分が放棄したことは、次の順位の人へ自動的には知らされません。ある日突然、疎遠だった親戚に固定資産税の通知や借金の請求が届き、もめごとになることもあります。放棄する場合は、次の順位になる親族に前もって伝えておくと安心です。固定資産税など税金の扱いは個別の事情で変わるため、最終的な判断は税理士や市の資産税の窓口、税務署にご確認ください。
全員が放棄した場合はどうなる?
相続人が全員放棄すると、家を引き継ぐ人がいない状態になります。この場合、亡くなった方にお金を貸していた人などの利害関係人や検察官が家庭裁判所に申し立て、相続財産清算人が選ばれます。清算人は家や土地を売るなどして借金を支払い、残った財産は最終的に国のものになります。
申し立てには収入印紙800円と官報公告料5,582円(国の公報である官報に載せる費用)のほか、清算人の報酬などに充てる予納金を求められることがあります。予納金は財産の内容によって異なり、裁判所は金額を公表していません。申し立てる前に、家庭裁判所や弁護士に確かめておきましょう。誰も申し立てなければ、家は手つかずのまま残り続けてしまう点も知っておきたいところです。
放棄した後の管理責任|2023年4月の改正で変わったこと
改正前の民法では、放棄した人も、次の人が管理を始めるまで財産の管理を続けなければならないとされ、遠方に住み実家に関わっていなかった人まで責任を負うのかが分かりにくい状態でした。2023年4月1日に施行された改正民法940条では、放棄の時に相続財産を「現に占有している」人だけが、相続人や相続財産清算人に引き渡すまで、自分の財産と同じ程度の注意をもって保存する義務を負うと定められました。

図3 改正民法940条の考え方(2023年4月1日施行。どちらに当たるか迷う場合は弁護士・司法書士へ)
たとえば、亡くなった親と同居していた子や、鍵を預かって実家を管理していた子は、放棄しても保存の義務が残ると考えられます。一方、県外で暮らし、実家に関わっていなかった子は、この義務を負わないのが原則です。自分がどちらに当たるか迷う場合は、弁護士や司法書士に確認してください。
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放棄する前にしてはいけないこと
放棄を考えているなら、家や家財には手を付けないことが大切です。相続財産を処分すると単純承認をしたものとみなされ、放棄できなくなるおそれがあります(民法921条)。
① 実家や土地を売る、人に貸す契約を結ぶ
② 価値のある家財や車を売る、譲る、捨てる
③ 亡くなった方の預金を引き出して自分のために使う
④ 家を解体する、大がかりに改装する
雨漏りの応急処置や、窓や玄関の鍵を閉めるといった、家の状態を保つための保存行為は処分に当たらないとされています。
![]() トウト君 | トウト君のひとこと|ここが大事 保存と処分の線引きは難しいので、形見分けや遺品整理を始める前に、弁護士や司法書士に相談しておきましょう。 |
放棄以外の選択肢も比べてみる
放棄は、預金などのプラスの財産もすべて手放す方法です。借金がなく、家だけが負担という場合は、相続してから売る、空き家バンクに登録して買い手や借り手を探すといった方法も検討できます。周南市では住宅課空家対策室が担当となり、空き家総合相談窓口や空き家情報バンクを設けています。

イメージ:相続した家の扱いを落ち着いて考える(実際の物件・書類ではありません)
2023年4月27日に始まった相続土地国庫帰属制度は、相続した土地を国に引き取ってもらう制度です。審査手数料は1筆(登記上の土地1区画)14,000円で、承認されると負担金が必要です。宅地の負担金は原則20万円ですが、市街化区域や用途地域(どちらも都市計画で定める、主に市街地の区域)が指定された地域の宅地は面積に応じて算定され、100平方メートルで約55万円が目安です。ただし、建物がある土地は申請できないため、家を解体して更地にする必要があります。
![]() トウト君 | トウト君のひとこと|よくある勘違い 放棄すれば国が土地を引き取ってくれる、とは限りません。相続土地国庫帰属制度は相続した人が使う制度なので、放棄した人は利用できないんです。 |
よくある質問
3か月を過ぎてから借金が見つかった場合、もう放棄できませんか?
借金がまったくないと信じたことに相当な理由がある場合など、事情によっては3か月を過ぎても放棄が認められた例があります。ただし判断は個別のため、気づいた時点ですぐに家庭裁判所や弁護士、司法書士に相談してください。
実家だけを放棄して、預金は相続することはできますか?
できません。相続放棄は、プラスもマイナスもすべての財産を引き継がない手続きです。家だけを手放したい場合は、相続したうえで売却や国庫帰属制度を検討するか、遺産分割の話し合いでほかの相続人に家を引き継いでもらう方法が一般的です。
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▶ お電話でのご相談:0834-21-0225(営業時間 9:30〜17:30/定休日 水・日・祝)
参考資料
・e-Gov法令検索 民法 第915条:https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/129AC0000000089
・裁判所「相続の放棄の申述」:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_13/index.html
・裁判所「相続財産清算人の選任」:https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_15/index.html
・周南市「空き家対策総合サイト」:https://www.city.shunan.lg.jp/site/akiyataisaku/
・法務省「相続土地国庫帰属制度について」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00454.html
・法務省「相続土地国庫帰属制度の概要」:https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00457.html
・法務省 相続土地国庫帰属制度の概要資料(PDF):https://www.moj.go.jp/content/001376268.pdf
・e-Gov法令検索 相続等により取得した土地所有権の国庫への帰属に関する法律施行令 第5条:https://laws.e-gov.go.jp/api/1/lawdata/504CO0000000316
・裁判所「山口家庭裁判所及び管内の支部、出張所 申立書提出先一覧」:https://www.courts.go.jp/vc-files/courts/moushitatesaki/25_02teisyutusaki.pdf
